反省させても効果はない。
- chikako
- 5月2日
- 読了時間: 4分

以前、施設で学習支援の仕事をしていた時のことです。職員の方から、反省させることは逆効果という話を聞いて驚いたことがありました。すぐに反省する子どもほど再犯を繰り返すというのです。
それは、否定的感情を外に出すことが「回復する出発点」であるにも関わらず、思い出したくない失敗体験、こっぴどく叱られた嫌な出来事とともに、様々な感情を抑圧(押し殺し)するために、思い出すことができなくなってしまうためです。叱った側の憂さを払うことしかできません。私たちは、辛いことから逃げ出したい。嫌な記憶は消したいという脳の習性があるために、失敗を繰り返さないための対策を考える前に、気晴らしをして忘れてしまいます。
残念なことですが、反省させることが目的になると、泣いて、誤った姿を見せてくれることがゴールとなってしまいます。そのために、問題に気づいて変わってほしい相手は、落ち込んでそこにいつまでも留まるか、憂さ晴らしをして、忘れてしまいます。叱られる→落ち込む→気晴らしをする→叱られるの悪循環の永遠ループを繰り返しているために、相手も自分も、無限ループの中を永遠に歩きつづけます。負の連鎖が止めなければ、事態が変わらないことに怒りが止まらなくなり、抑えきれない怒りは、内に外に蓄積し続けるか、水が高い所から低い所に流れるように、弱い人に、弱いものに向かっていきます。
本当の目的は、相手が反省した姿を見る事ではなく、事態が少しでも良くなることではないでしょうか。相手が同じ過ちを繰り返さないように、今、本人ができる事を一緒に考え、実行していくことではないでしょうか。
同じ無限ループは、前にも書きましたが、内に外に悪者を見つけて恨み続ける事です。また、過去の出来事に対してあの時こうすればよかった。あの人がこうしてくれなかったからと人のせいにしたり、運が悪かったと運命のせいにすること。さらに、自分のせいでこうなった。自分が悪いと責め続けること。これもアリ地獄にはまっていくように脱け出すことができなくなります。なぜなら、過去を書き換えることはできないからです。
今現在は、真っ白なキャンパスなはずです。これから起こることは、誰にも分からないのに、過去の出来事の恨みつらみで真っ黒に埋め尽くしていることに気づいていません。それは、とても残念なことです。大切なことは、心に何を描いているかということです。文字よりも、コラージュのようにお気に入りの場所、物の写真を切り貼りしたり、具体的なビジョン(情景)を絵に描いてみることが効果的です。
今、できる事に全力を尽くせるとき 心も体も身軽になります。その疑似体験は、ゲームやネットサーフィン、お酒など依存していることに逃げるときにも体験できます。しかし一時はよいのですが、永遠には続けられません。問題が解決されないまま、極端な方向にどんどん大きく膨らんでいきます。 話が変わりますが、ロシアの作家、ドストエフスキーは、殺人犯と聖職者が出現するという家系に生まれています。両極端の人が排出され続けた家系ですが、彼が「罪と罰」を書いた後、その家系では、聖職者も殺人犯も現れなくなったそうです。人には、光も闇もあり、光だけでは生きられない。闇だけでも生きられない。両方持っているということを受け入れることが重要なのです。清貧で知られたマザー・テレサも晩年自分の心の中にある悪魔に苦しんだと言われます。 これまで様々な方々に出会ってきて、この世の中を生き抜いていくためには、夢を語るだけではなく、闇も光も見通す凛とした強さが必要だと感じるようになりました。それはビジョンを持ちつつも、実現するまであきらめない揺るがぬ心でもあります。
しかし、心が折れてどうしようもなく、心の強さを持てないときもあります。その時は、動かず暗転しているようにしか見えない現実があるからこそ、無理に動かず、心が回復するまで深海魚のようにじっと耐え、待つことも必要です。そうでなければきれいに見える、強そうな偽物に心を奪われ、道を見失います。一時心を休める必要があるのです。
この状態を改善する方法として、私が始めたのが三週間チャレンジです。それは、「やったほうがいいな。でもあとでやろう」と思っていた小さなことをやり始める事!これがとても重要です。私たちは、大きな変化を期待してしまいますが、私たちは恒温動物 一定の状態に保つ性質(ホメオスタシス)を持っているため、大きな変化は、毒になります。ダイエットのようにリバウンドしてしまうため、すぐにやめてしまいます。そのため小さいことを少しずつの方が効果が定着しやすいのです。それが、一昨年、昨年 日本心理臨床学会で事例発表した三週間チャレンジです。
三週間チャレンジは、事態を変えるための試作ですが、三週間をワンクールとして更新していくと、無限ループにいることに気づき、立ち止まることが出来ます。それには、何があっても自分を励まし続ける事。励ましあえる友がいることが重要です。その歩みが新しい流れを生み出し、二度と同じわだちを踏まなくなるという不思議な法則があります。 参考文献 岡本茂樹著 「反省させると犯罪者になります」 新潮新書
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