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WISC‐Ⅴのススメ

更新日:6月4日



知能検査は、約10年ほどでバージョンアップしており、

現在の最新版は、WISC‐Ⅴです。


昨年夏から今年春まで、WISC‐Ⅴの新しい下位検査の開発のために研究協力をしましたが、

最新版のWISC-Ⅴも、さらに進化します。


しかし、現在のウェクスラー式の知能検査の主流は、WISC‐Ⅳが使われています。

WISC‐Ⅳは、WISC‐Ⅲに問題があることが指摘され、新しい形にする必要があったのですが、

急に新しい形態にすると、現場が混乱するからという理由で、改訂版であるⅤの発売の前に、Ⅳを挟むために発売されており、WISC-Ⅲの改訂版であるⅤは、2021年にやっと発売されました。


WISC‐Ⅳでは、主要指標が4つですが、WISC‐Ⅴには、5つの主要指標があります。

言語理解、視空間推理 流動性推理 ワーキングメモリ、処理速度の5つ


大きく変わっているのは、WISC-Ⅳでは、知覚推理とされているところが、

WISC‐Ⅴでは、視空間推理 VSI と 流動性推理 FRI に分かれたことと


WISC-Ⅳまでは、ワーキングメモリが、聴覚記憶のみであったのが、WISC‐Ⅴでは、視覚記憶が加わったことです。


視空間推理と流動性推理をおおざっぱに説明すると

視空間推理 VSI では、目から入る情報から 見る力

流動性推理 FRI では、目から入る情報から、推理判断する力をみます。


WISC‐Ⅳの知覚推理は、この二つが中途半端に混ざって構成されているために

見る力が弱いのか、強いのか、推理判断する力が弱いのか、強いのかが分からないため

具体的支援を行うためには、学研の WAVES を使って

3領域(視知覚、目と手の協応、眼球運動)の視覚関連の基礎スキル を見る必要がありました。


また、ワーキングメモリ(短期記憶)は、目から入ってくる情報を記憶する視覚記憶と耳から入ってくる情報を記憶する聴覚記憶があります。WISC‐Ⅳまでは聴覚記憶のみでしたが、WISC‐Ⅴからは視覚記憶の下位検査も加わります。


知能検査の所見には、平均値との差や、主要指標間の差が大きいことが問題と指摘するものがありますが、主要指標間に差があるのは、9割の人にあるという統計結果があります。


具体的支援を検討するためには、

平均値との差ではなく、下位検査間のバランスがどうかを見ることによって

その子の軸足(判断・思考のカギ)がどこにあるのかを知ることができ

何をすればいいのかが見えてきます。


しかし、ここで注意すべきことは、様々な研究の積み重ねによって知能検査が進化し続けていますが、知能検査一つですべてが分かるわけではありません。人によっては、ザル つまり拾えない情報の方が多いと言う人さえいます。


また、小さいころからの小さな体験の積み重ねの中で脳が発達してきているため

遺伝の問題もありますが、日々の小さな支援の積み重ねによって今があるため、丁寧な聞き取りが必要になります。


ピアノの初学者が 突然 ピアノソナタ が弾けるわけがない様に、

日々の取り組み、トレーニングが必要です。

最初は、一日5分 時には3分から お母さんと一緒に取り組みを始めています。

幼児や小学生の場合、5分もひざを突き合わせて話ができないのであれば、その関係性を育てていくこと。ひざを突き合わせるところから始めます。


姿勢を維持して座ることが出来ない場合は、身体を育てる必要があります。 姿勢を正すことが出来ると、正中線といって体の中心が定まり、そこから肩、ひじ、手首、指先と器用に動かせる範囲が順番に整っていくためです。飛び級はありません。


これを簡単に見極めるために、私は、文字を書いている時の姿勢を観察しています。

その姿勢や筆記用具の持ち方によって、身体の発達がどれくらいなのかが分かるのです。(これは、作業療法士 笹田哲先生 書字指導アラカルト 中央法規 の39ページに詳しく書いてあります。)

身体が育っていなければ、学習も進みません。このため、計算を覚えたり、漢字を覚えることも大切ですが、身体の感覚に働きかけるワークも重要です。簡単なところから、母親と一緒に散歩するところから始めることもあります。 次のステップとして、 自らの誤りに気づき、修正できる段階に立つためには、

信頼できる人との愛着関係(信頼関係)の構築が出来ていなければ成立しません。


それは、単に甘えられる関係ではなく、

命令に従うだけの服従関係でもない塩梅を見極める必要があります。


愛着関係は、

人としての土台として何よりも大切です。


発達、成長は、人との間において生み出されていくものであり、

脳だけではなく、身体の発達との相乗効果によって

知能発達に大きく貢献します。


そのため、

支援していくためには、検査結果を見ただけではなく

感覚、身体の発達、普段の行動、人間関係も含めて

総合的に見ていく必要があります。

知能検査等の所見がありましたら、

読み解き、


現状からどのような支援ができるか、検討し

お母さんと一緒に 少しずつ取り組んでいきます。

 
 
 

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